一度は食べたい!スペインの最高級品「イベリコ豚」
長い間、スペインの豚肉は禁輸とされてきましたが、ここ数年でようやく解かれ、様々な形で日本にも輸入できるようになりました。その影響もあり、みなさんにもご存知の「イベリコ豚」という名の豚肉が出回っています。
「イベリコ豚」は、古代より地中海沿岸地域に生息していた野生の豚の子孫で、イベリア種というスペイン西部地方デエザという森で育つ黒豚なのです(あるいは純血度75%以上)。黒い蹄(ひづめ)が特徴ですが、現地では皮にわずかに残る黒い毛を見て判定します。これは、蹄は黒く塗ってごまかせても、毛の黒色だけはごまかしがきかないからです。ただし、非イベリコ種のなかにも、黒い蹄と毛を持つ豚も存在するため、必ずしも「黒い蹄の豚=イベリコ種豚」とは言えないのです。
デエザは、樫の木が自生している広大な森林地帯です。そこに放牧され、はじめは穀物を食べますが、次第に樫の木から落ちるどんぐりの実だけを食べて育ちます。そして、10月から3月にかけての半年間で体重を90kgも増やすまでになります。十分な量のどんぐりが実らないと、規定の体重まで育たないため、その年のどんぐりの出来によって、放牧する数が決まるのです。自然の中で自由に動き回れることもあり、豊富な運動量がより高密度な筋肉繊維をつくり、上質な「イベリコ豚」に育ちます。
また、「イベリコ豚」は飼育方法により3段階にグレードが分けられます(この区分はあくまで生ハムのためのもの)。
〇Bellota ─ ベジョータ(意味:どんぐり)
…初期の飼育で100kg程度まで飼育された後に放牧。さらにどんぐりで50%の増体をした「イベリコ豚」。体重は規定を超え、まさに最高級品とされる。
〇Recebo ─ レセボ(意味:餌を補う)
…放牧まではベジョータと同様に飼育され、放牧中に50%の増体ができず、穀物等の飼料を与え、出荷重量まで飼育された「イベリコ豚」。
〇Pienso ─ ピエンソ(意味:飼料)
…特別な飼育はせず、白豚同様の飼料を与えて出荷重量まで飼育された「イベリコ豚」。
このように育てられた「イベリコ豚」は、霜降り状の赤身と独特の香り、良質な口溶けの脂が特徴的で、今では世界中の一流シェフたちを虜にしています。もちろん、モモ肉は最高級生ハムに変身。また、煮込み料理に使うことの多いホホ肉をカツレツにしたり、タンやバラを串焼きにしたりと、各店では様々なメニューで勝負しているようです。これも、単なる豚肉ではない、「イベリコ豚」だからこそできる調理法なのでしょう。