「お客様は神様です」
一度は聞いたことがあるこのフレーズ。飲食店に関わっている方もそうですが、このフレーズの意味を問われると「お客様は神様だから大切にしなくてはならない」と考えていませんか?
実は本当の意味は全く違うのです。
今回は、このフレーズの生みの親である三波春夫さんが本当に伝えたかったこと、誤解が生んだ風潮についてお届けします!
■フレーズの誕生と広がり
「お客様は神様です」のフレーズは、1961年頃に三波春夫さんと宮尾たか志さんの対談で生まれた言葉だと言われています。
このとき、歌手である三波さんにとってのお客さんとは寄席に訪れた方々のこと。舞台に立つ演者として、お客様に喜んで頂くために澄み切った心を持つという芸道の本質について語られていたのです。
ですが、その真意は知られるきっかけがありませんでした。
その後にレツゴー三匹と呼ばれる昭和の漫才トリオが、このフレーズを使用して人気を博したことで、フレーズのみが一人歩きを始めてしまったのです。
■フレーズへの誤解
三波さんは生前、このフレーズに対する誤解をとくことに努めていたと言われています。
「お客様は神様」の意味について問われた三波さんは、インタビューの中で「お客様の前で完璧な芸を披露するためには、神の前で祈りを捧げるように雑念を払って澄み切った心を持つことが大切」という意味だったと明かしています。
つまりは、飲食店などのクレーマーが「お客様は神様だ。丁寧に扱えよ」という使われ方とは全く異なるのです。
■「お客様は神様」の弊害
日本の飲食業界やサービス業界では、お金を支払う人がサービスをする人よりも地位が高いという考えが蔓延しています。
意味を誤解された「お客様は神様」がそのまま通じて、お金を支払ってくれるからお客様だと考える風潮があると言われています。
実は、三波さんもこの考えについて語られたことがあります。
「お客様はお金をくださるから神様なんですか?」と尋ねられた三波さんは「じゃああなたは神様からお金や何かをもらったことがありますか。お賽銭を上げて、お参りするだけでしょう」と答えたとオフィシャルブログに明かしています。
■グローバルな接客「お客様は1人の人間です」
ここまで誕生や真意について見てきた「お客様は神様です」という言葉は、実は日本だけで通じる考え方です。
海外では、店員・レジ担当者はお店とは全く関係ない「1人の人間」だと対等に考える風潮があると言われています。
日本では考えられませんが、スーパーマーケットで清算を済ませたお客が、店員に感謝の気持ちを述べずに立ち去った行為がバッシングを浴びることもあるのです。
さらに海外では「お客様は神様」という言葉を使用するのは控えたほうが良いでしょう。特に一神教の信仰に厚い国で、神と同等の立場だと主張することは命の危険に晒されるかもしれませんよ。
以上が「お客様は神様」が誕生した流れと三波春夫さんが伝えたかった真意です。
どうですか、間違った使い方をしていませんでしたか。
現在、会社の朝礼で「お客様は神様、クレームはラブレター」と堂々と語る方もいるようです。
誤解した捉え方を改めて、日本の飲食業界やサービス業界が良い方向に発展してもらいたいですね!