イノシシと豚は、姿・形がよく似ていますが、この両者の違いは一体何でしょうか?
実は動物学上、豚は哺乳綱鯨偶蹄目イノシシ科に分類されています。元をたどれば、豚はイノシシの親戚のようなものなのです。つまり(広義で言えば)、イノシシが家畜化されたものが豚なのです。
ではいつから豚は、人間に家畜化されたのでしょうか?
今から1万年ほど前にあったとされる中国のある遺跡から、豚の骨が出土したという記録があります。すでにこの頃には家畜化されていたようですね。諸説紛々ですが、中東では6000年ほど前、ヨーロッパでは5000年程前と言われています。
家畜化といっても、元はイノシシですので、気性も荒く、現在のように家畜化に至るには長い長い時間が必要でした。
誰もが狩猟民族であった時代、山野に入ればイノシシは簡単に狩猟できたので、食料として確保しやすかったのです。しかし、人口の増加とともにイノシシの狩猟が困難になってくると、人類は知恵を使い、簡単にイノシシの肉を確保できる方法を考えました。それが“家畜化”です。野生のイノシシを人間の生活環境の中に置き、イノシシに備わっている凶暴性を鈍化させ、人間の扱いやすいようにして飼育し、繁殖させ、その肉を食べるという恩恵を受けてきました。
“家畜化”と言っても、動物であれば何でも家畜化できるわけではありません。家畜化するために必要な条件は、雑食性(何でも食べるので他の動物に比べ飼育しやすい)、多産性(妊娠期間が短い上に一度に何匹もの子供を産む)、群居性(群れの中で飼育できる)、と言われています。牛や鶏、羊、アヒルなど、既に家畜化されているものがこれらの条件を満たしていますね。
ちなみに一般的な動物の中で人間による家畜化の歴史が長いものから順番に列挙すると、一番古いのは犬(元はオオカミ)で1万7000年程前と言われています。次いで羊(山羊を含む)が1万3000年程前、以下、豚、牛、猫、鶏、ロバ、馬という順になっているようです。
また各国別の豚の飼育数は、中国が約4億匹とダントツ(中国では肉と言えば豚肉を指します)に多く、アメリカ、ブラジル、ドイツ…と続きます。日本は約950万匹です。(2015年時点)