古典落語「目黒の秋刀魚」のあらすじ
ある初秋の日、目黒不動参詣へ出かけたお殿様の鼻を、農家からさんまを焼く良い香りがくすぐりました。「下魚(げうお)でございますから」という家来衆の反対を押し切り食べたあの味が忘れられないお殿様。お屋敷に帰って我慢できなくなり「さんまが食べたい!」と所望する殿様に驚いた家来たちは、房州から最上級のさんまを取り寄せます。しかし殿のお身体に触っては大変と、十分に蒸して脂をとばし小骨を抜いて、食膳に上る時にはさんまは無残なだしがらの様になっていました。記憶とかけ離れた味わいに殿様は首をかしげ、「このさんま、いずこより取り寄せたのじゃ?」と尋ねると、「房州です」との答え。すると「それはいかん。さんまは目黒にかぎる」。
登場する殿様は、松平出羽守・将軍家光・吉宗・はたまた赤井御門守…と、噺家によってさまざまですが、庶民のごちそうである焼きたてアツアツのさんまの味は殿様も同じように美味と感じる部分や、家臣の右往左往ぶり、また殿様の世間知らずが笑いを誘う噺です。
実際、さんまの産地はどこなの?
日本で獲れるさんまの半分以上は北海道で水揚げされています。次いで宮城・福島・岩手など東北沿岸の各県が上位を占めます。さんまの水揚げは8月末頃、北海道で始まります。徐々に三陸沖まで水揚げが南下し、このエリアの水揚げは10月中旬ごろまで続きます。そして銚子沖に降りてきた9月頃が最も脂が乗っているといわれます。11月には伊豆半島まで南下しますが、この頃になるとやや脂も減ってサイズも小さくなり、主に干物などに用いられます。
目黒のさんま祭りに行ってみよう!
落語で有名になった目黒では、9月にさんま祭りが2回開催されます。1つは目黒駅前で開催される、目黒駅前商店振興組合青年部主催の「目黒のさんま祭り」。岩手県宮古市のさんま約6,000尾を炭火焼きにして、徳島県神山町産のカボスとともにふるまわれます。同時に木戸銭無料の「目黒のさんま寄席」も開催される太っ腹なイベントです。
もう一つは目黒区民センター付近で開催される、目黒区民まつり実行委員会主催の「目黒のSUNまつり」。こちらは目黒区の友好都市である宮城県気仙沼市から直送された新鮮なさんま約5,000尾を炭火で焼いて、大分県臼杵市産のカボスと提供されます。「ふるさと物産展」や「こども広場」といった催しに加え、「お祭り広場」での市民団体や郷土芸能によるステージがあり、来場者が参加し体験できるという、盛りだくさんなイベントです。
食欲の秋の到来を告げる大人気の名物行事のため、いずれも並び時間3~5時間は必至です!とはいえ、なかなか味わえない炭火焼きの香ばしい焼きたてのさんまに舌鼓を打つ貴重な機会、ぜひ一度出かけてみてはいかがでしょうか?