やっぱり軍服説
女性と男性の洋服のボタンの位置、これにはいくつかの説があります。いずれも当時から右利きの方が多数派だったことを踏まえての説になります。
ひとつは男性の洋服の原型とも言われる中世ヨーロッパの軍服のボタンの位置。当時、軍人はサーベルを右手で抜きやすいよう、左の腰に差していました。ゆえに、左にあるとサーベルが引っかかることを懸念し、ボタンは右となったとか。その後、女性の洋服にもボタンが使用されますが、当時の男性優位の社会で差別化する意味から位置を逆にしたのです。一方で、貴重な素材を節約するため、男性の洋服を裏返して女性用に作り直したので、ボタンが逆になったという説もあります。百花繚乱の女性アパレルが中心の現在とは、隔世の感がありますね。
出ました貴族説
一方、中世ヨーロッパの貴族の習慣をルーツとする説もあります。貴族階級の女性は自分で着替える習慣がなく、右利きの召使が着替えを手伝う際に、向かって左にボタンがある方がかけやすかったというのです。一方男性は貴族といえども自分で着替えを行う習慣から、右前になったともされます。ちなみに日本は、といいますと、民族衣装である和服の襟の合わせ方は男女一緒です。
ちなみに、19世紀以前はどうなっていたか?というと、ナポレオンの時代まではボタンの位置は服の仕立て屋によって違っていたということです。彼の肖像画に描かれた軍服のボタンの位置は、右の場合も左の場合もあります。
コックコートのルーツはナポレオン!
西洋料理人のシンボルともいえる純白のコックコート。この原型は、19世紀前半、フランスの皇帝ナポレオンの着用していた、通称「ナポレオン・コート」だといわれています。その後、機能面を追求し、現在の形に進化しています。ダブルに仕立てられたこのコートのボタンホールは?というと、なんと左右にあります。これは調理で汚れても、反対側を前に持って来ればそのままお客様の前に出るのもOK、というわけです。また、布製のノットボタンが使用されることが多いのは、熱湯などをかぶった際にすぐに脱ぐことができるため。前身頃の二重の布は、調理時の火や油から身を守るため。また、本式のカフスは折り返しが長く作られています。これは、伸ばせば鍋つかみになるという、全てが理にかなったつくりになっているのです。