「天」はテングサの天!
寒天とところてん、これはどちらも、天草(テングサ)やオゴノリ等の海藻が原料です。ところてんは干した海藻に水を加えて煮だし、不純物や繊維を除いて固めたもの。「ところてん」というと型に入れて細長く突き出した形状が一般的ですが、本来はテングサの成分を固めた固形物を指します。このところてんを凍らせて乾燥させたものが「寒天」です。古く奈良時代に書かれた「正倉院宝物文書」の中に、心太(ところてん)として登場する、日本人にとってなじみの深い食べ物といえます。
寒天のはじまりは「うっかり」から。
江戸時代に京都の旅館の主人が、ところ天の食べ残しを寒い戸外に出しておいたところ、自然に凍って日中に解け、これを繰り返しているうちに脱水・乾燥した寒天ができたと言われています。由来も「寒ざらしのところ天」からきました。
主な生産地は長野県、岐阜県、京都府。なかでも日本一の産地となっているのが長野県の諏訪地方です。これは冬季の平均気温が2℃~マイナス15℃という寒冷地であること、きれいな水に恵まれていることなどの気象条件が、寒天づくりの条件にぴったりマッチするためです。江戸時代には関西が主産地で、長野の人々も副業として出稼ぎに従事していました。そんな中、天保期(1830?1843年)に諏訪の小林粂左衛門という行商人が京都から寒天の製法を持ち帰り、農閑期の副業として発展したのがその始まりとされています。
ところてんは箸一本で食べる?
甘味喫茶などのメニューでみられる「ところてん」は、三杯酢(同量の酢、醤油、みりんを合わせた調味料)をかけた物に和辛子を添えて食べるスタイルが多いようです。関西では黒蜜をかけて食べます。また東海地方では三杯酢をかけたものを箸一本で食べる習わしですが、由来は不明のようです。ちなみに、あんみつの中に入っているアレも、形は違えど本来の名前は「ところてん」です。
ところで、テングサから煮だして固めた、純粋なところてんを食べたことはありますか?寒天から作ったものとは全く異なる淡い琥珀色、シコシコ・ぷりぷりとした歯ごたえに驚くはずです。これは単純に材料が異なるだけでなく、寒天の原料には、国産のものより品質が劣る海外からの輸入品の海藻を使用していることも理由と考えられます。国産のテングサから煮だした純粋な「ところてん」、機会があればぜひ一度お試しください。