ウスターソースの起源
ウスターソースはその名前が示すとおり、イギリス・ウスターシャー州の州都、ウスター市で初めて作られたことにちなんで名づけられました。19世紀後半にイギリス貴族が、植民地であったインドからこのソースの製法を持ち帰り、薬剤師に命じて作らせたものがその起源といわれています。
ルーツをさかのぼると、インドのベンガル州の総督だったサンディーズ卿が、ヒンズー料理のソースに魅せられて、その製法をイギリスに持ち帰った。そして、リーとペリンズという二人の科学者に製造を依頼、のちに売り出したところ、大評判になったものである。
出典:「言葉のルーツ」おもしろ雑学 ?(エンサイクロネット/PHP出版)
現在でもイギリスではこの「リー&ペリンズ社」のソースは市販されており、そのラベルには「ウスター州の貴族による製法」と記されています。
もう一つの説としては、19世紀初頭に、ウスター市に住む主婦が余った野菜や果実の切れはしを保存しようと、腐敗を防ぐために塩や酢を加えて貯蔵しておいたものが熟成され、その美味しさが評判になって製法が伝わった、とも言われています。
では本場のウスター・ソースのお味は?というと、日本のものと比べて甘味はなく酸味が強い印象です。これは主原料としてモルトビネガーが使用され、ここにアンチョビやさまざまな香辛料を加えて熟成されているためです。また、原料に果実と野菜を使用していないため粘度がなく、サラっとして見た目は醤油に似た濃い褐色の液体です。使用法としては料理に直接かけて食べるのではなく、煮込み料理などの隠し味として使用するそうです。
日本には江戸時代にやってきた!
日本には江戸時代末期に渡来し、明治維新後の洋食人気とともに「西洋の醤油」と認識され、各地に広がりました。明治17年に日本初の国産ソース「ミカドソース」が、ヤマサ醤油から発売されます。しかし本場イギリス式の製法だったため日本人の味覚に合わず、全く人気が出なかったため発売中止になりました。
その後、様々に工夫されて、現在のような甘さととろみのある味わいに変化していきます。明治29年には“錨印ソース”(現在のイカリソース)、同38年には“犬印ソース”(現在のブルドックソース)、同41年には“カゴメソース”(現在のカゴメ)など、一般家庭向けの商品も次々と発売されました。いずれもサラっとしたタイプでした。戦後になり昭和27年には、お好み焼きの需要に特化し、とろみの強い“お好みソース”(オタフクソース)も登場しています。
そして現在、ソースといえばウスターソースを指すぐらい、すっかり日本の味として食卓に欠かせない存在になりました。インド発、イギリス経由で日本で独特の進化を遂げていったというわけなんですね。
とんかつ、中濃?ソースの違いって何!
ソースいろいろな香辛料が使われており、風味が豊かなため、コロッケやカツ、にかけて食べるだけではなく、炒め物や煮物、焼き物の味付けにも重宝しますね。ちなみに、市販のウスターソースには中濃ソースや濃厚ソースといった種類がありますよね。農林水産省の規格によると、ソースの定義として『次に掲げるものであって、茶色または茶黒色をした液体調味料をいう。1.野菜若しくは果実の搾汁、煮出汁、ピューレーまたはこれらを濃縮したものに糖類、食酢、食塩及び香辛料を加え調整したもの。2.1にでん粉、調味料を加えて調整したもの。』とされています。中濃、ウスター等の区分表示は液体の粘度によってJAS企画が定められています。カゴメのサイトによると、味わいには下記のような区別をつけているそうです。
「ウスターソース」は、野菜や果実の繊維質が少ないので、サラリとした口当たりとほどよい辛さが特徴です。「中濃ソース」は、ウスターと濃厚の中間にあたるソースです。繊維質はやや少なめで、ほどよい口当たりと甘味が特徴です。「とんかつソース(別名:濃厚ソース)」は、果実を多く使用しており、繊維質も多く含まれ、トロリとしたソフトな口当たりです。?
出典:カゴメ株式会社
各社によって違いはありますが、サラサラ度は薄い順から「ウスター」→「中濃」→「とんかつ(濃厚)」の順、味は「ウスター」が辛め、「とんかつ」は甘めでソフト、「中濃」はその中間のほどよい辛みと甘味を合わせ持ったバランスのよい味わいです。また「お好みソース」はとんかつソースと同じ程度の粘度と味わいです。ちなみに、11月7日は『ソースの日』です。昭和22年11月7日に日本ソース工業会が設立されたことと、ウスターソースのエネルギー量が100g当たり117キロカロリーであることにちなんで制定されたそうですよ!