ソーセージについての他の記事もご覧ください。
「どこが違うの?「ウインナー」「ソーセージ」「チョリソ」」
「腸」には天然と人工があった!
ソーセージはもともと豚や羊の腸にひき肉や脂をつめて形を整え、燻製させて作ります。天然腸とは、ソーセージの原料を詰める動物の腸のことです。別名「天然ケーシング(Natural Casing)」ともいいます。
「ケーシング」とは本来「腸」を意味していましたが、「人工ケーシング(Artificial Casing)」が登場してからは、食肉加工時に使用する皮膜全般を意味するようになりました。天然ケーシングには羊・豚・牛などの腸が用いられ、加工して薄い膜にして製品化されています。
ちなみに、農林水産省の定めたJAS規格によると、ソーセージの種類によって、天然・人工を問わず使うケーシングの種類が定められています。
ソーセージの種類 | JAS規格 |
ボロニアソーセージ | 牛腸を使用したもの、または 製品の太さが36mm以上のもの |
フランクフルトソーセージ | 豚腸を使用したもの、または 製品の太さが20mm以上36mm未満のもの |
ウィンナーソーセージ | 羊腸を使用したもの、または 製品の太さが20mm未満のもの |
現在、日本で使われている天然ケーシングは輸入品です。主に中国・オーストラリア・ニュージーランド等から輸入され、その98%が羊腸で占められています。上の表を見ていただくとわかるように、日本では細めの羊腸を使用したウィンナーソーセージが好まれるためです。
ちなみに天然ケーシングは洗浄され、塩漬けにされて樽に詰められた状態で輸入され、「ハンク」という単位で取引されます(※1ハンク=約92m)。日本では日本羊腸輸入組合によって輸入されており、一括して洗浄→殺菌→再度塩漬け→加圧脱水したのちに通関を行い、各地に流通されます。この組合の活動により、品質や安全性を保っているのです。
人工ケーシングって何でできてるの?
天然ケーシングに比べて規格が一定で強度も高いため品質管理がしやすく、広く普及している人工ケーシング。その種類は、そのまま加熱調理をして食べる事のできる材質と、食べられない材質のものに分けられます。
食べられる人工ケーシング
食べられる材質としては、天然たんぱく質を原料としたコラーゲン系が挙げられます。コラーゲンは天然腸と同じで、タンパク質の一種なので高い安全性が特徴です。例えば昔ながらの真っ赤なウィンナーは赤く着色された人工ケーシングによって作られています。
コラーゲンケーシングは実は天然ケーシングより10%ほど高価な製品ですが、品質にバラつきがなく、強度が高いため扱いやすく、広く利用されています。日本での使用は、50%以上がフランクフルトソーセージの製造で占められています。
食べられない人工ケーシング
食べられない材質としてはプラスチックを原料とした塩化ビニリデン系・ポリエチレン系、植物性繊維素を原料としたセルロース系などがあります。不可食性のケーシングフィルムは密閉性・保存性、さらに印字性に優れ、経済的、さらに不揃いな天然ケーシングに比べて均一に処理できるため品質も安定して、仕上がりもよいので広く使用されています。
塩化ビニリデン系は魚肉ソーセージなど、皮をむいて食べるタイプのソーセージに使用されています。また、セルロース系(不溶性食物繊維)のケーシングは燻煙に必要な透過性があり強度が高いため、ハムなどに多く利用されています(あらかじめ工場で剥がしてから出荷されます)。セルロースを原料としたケーシングは間違って食べたとしても安全ですが、体内で消化されないため食べることは想定されていません。
この他、数は少ないものの「紙」・「アルミラミネート」・「シルク」・「パーチメント」などの種類のケーシングも存在します。
天然腸をつかうメリットは?
人工ケーシングは需要も多いため研究開発がすすみ、技術も上がって多様な種類も登場していますが、いまだに流通するソーセージの70%が天然ケーシングを使用しています。天然ケーシングは人工ケーシングと比較して、その違いはどこにあるのでしょうか。
①食感がいい
皮ごと食べられて、パリッ、パキッとした独特の食感。ソ-セージの美味しさのキモともいえるこの食感は天然腸でなくては出せないため、人工ケーシングの追随を許さない部分ともいえます。
②通気性・伸縮性に優れる
天然腸の表面には裸眼では確認できない大きさの細かい穴が、あいています。この穴が内部の水分を適度に乾燥させるため、肉とケーシングが良く密着してシワになりにくいのです。さらに燻煙(スモーク)加工が浸透する効果も高まります。
③皮に風味があり、ソーセ-ジに個性が生まれる
天然ケーシングを使用したソーセージは、人工のものに比べて少々形が不揃い。これがいかにもソーセージらしい、独自のカーブを生むのです。さらに牛、羊、豚の腸はそれぞれ色やサイズ、「皮」そのものの風味も異なるため、この個性がソーセージの特徴や美味しさにつながっています。
まとめ
朝食に、おつまみに、今や私たちの食卓に欠かせないソーセージ。天然と人工、一番わかりやすい違いは、その歯ごたえにありました。また、目で見たときに、形状がまっすぐで太さにムラのない製品は人工ケーシング、太さや長さ、カーブにバラつきのある製品には天然ケーシングが使われているといえます。
ソーセージに「天然」・「人工」の表示義務はありません。ただ、天然腸等を使用した場合は「天然腸」・「天然ケーシング」等の表示を行うことができ、 「皮なしウィンナーソーセージ」として販売されている製品は人工ケーシングの場合がほとんどです。