お店の印象を左右する「トイレ」。そしてその印象は、ズバリ清潔感で決まります。トイレの設備の立派さやスペースの大小は関係ありません。設備そのものは古くても、キレイに保たれたトイレは清々しい印象を与えるものです。
TOTOが行った男女2,000人に対するアンケート結果によると、「飲食店のトイレが汚いとどのように感じるか」という質問に対して、全体の82.3%の人が「お店のイメージが悪くなる」と回答し、56.6%の人が「料理や雰囲気のレベルが同じなら他の店に行こうと思う」と回答したそうです。
出典:モテモテ居酒屋の集客ガイド
清潔なトイレを使ったお客さまは「このお店はすみずみまで気配りができている!」という良いイメージを持ちます。これがお店全体への信頼感へと繋がっていくのです。
大事なのはわかってるけど、つい後回しにしがちなトイレの掃除。忙しい毎日の中でも無理なく行える「無駄なく、雑にならない」お掃除術と、イザという時に使える便利な情報をお伝えします!
まずは、基本の掃除方法をおさらい
「オープニング前に行う掃除」「クロージング時に行う掃除」「営業時間内にやる掃除」「週に1回程度やる掃除」とわけて掃除することが大切になってきます。
その際注意したいのは、スタッフはトイレ掃除を行う前に必ずエプロンなどは外し、手袋を着用すること。「素手でトイレ掃除、その手で接客」は絶対にいけません。掃除は必ず手袋をして行い、さらに外した後手洗いを行うことで、感染症の予防にもなります。
①オープニング前に行う掃除(所要時間10分)
①ふたを上げ、ふたの裏にまんべんなく泡をかける。
②2~3枚重ねて折りたたんだトイレットペーパーで、ふたの裏の泡をふき取る。ふたの付け根の部分まできれいにふきとること。
③鏡に手垢や水滴がないかチェックして、汚れていたらペーパータオルなどで簡単に磨く。
④洗面ボウル部分の水滴はペーパータオルでふき取る。
⑤蛇口やステンレス部分はすべてペーパータオルでピカピカに磨く。
⑥おそうじシートで便座の表面をふく。
⑦6のおそうじシートで、ふたの裏をもう一度ふく。付け根の部分もきれいにふく。
⑧便座を上げ、ブラシで便器の中をみがく。
⑨便座の裏を7のお掃除シートでふく。
⑩便器のふちを9のお掃除シートでふく。
⑪便器の外側を根元まで丁寧にふく。
⑫新しいおそうじシートで、トイレットペーパーホルダー、水洗レバー、便座のふたをふく。
⑬12のお掃除シートで床をふく。
コツ:掃除の基本は、「上→下」「きれいなところ→汚い所」です。
せっかくきれいにした箇所を、汚れたシートでこすることで汚さないように注意しましょう!便器の中を磨いたら一度水を流し、便器内のきれいな水でブラシを洗い、良く水を切ってから外気にさらして乾かし、収納するとブラシを清潔に保つことが出来ます。
②クロージング時に行う掃除(所要時間5分)
「今日の汚れを明日に持ち越さない」のが鉄則です!
①便座を上げ、トイレシートで便座の裏、便器をふく。
②新しいシートを使って、床をふく。
③汚物入れやゴミ箱のゴミを集めて処理する。
③営業時間内にやる掃除(所要時間3分)
チェックリストを作成し、1時間おきに行うと良いでしょう。汚れていたらゴム手袋をはめて掃除します。
●床は汚れていないか
●壁は汚れていないか
●便器は汚れていないか(便座も上げてみる)
●洗面台は汚れていないか(蛇口もチェックする)
●鏡に水滴や手垢がついていないか
●ごみ箱はいっぱいになっていないか
●トイレットペーパーは足りているか(補充分も含む)
④週に1回やる掃除(30分程度)
①ダスター、ぼろきれなどを使い、換気扇のほこりを払います。
②ふける素材の壁の場合、消毒用アルコールなどを使って壁を水拭きします。トイレの上部から吹き始め、最後に一番汚れの多い下部をふくようにします。
③鏡がある場合は、ガラス用スプレー式洗剤などをかけてふきとり、その後必ず乾いたダスターで乾拭きしてピカピカに磨きます。
④手洗い所の水回りを掃除します。スポンジなどを使用して、蛇口などのステンレス製器具を洗います。後で必ず、乾いたダスターで乾拭きしてピカピカに磨きます。
④「毎日のそうじ」を行います。
⑤お掃除シートで床を「奥→手前」の順にふきます。
⑥新しいお掃除シートでドアを「上→下」にふきます。
●チェックシートDLサイトは数多く存在します。使いやすいものを選び、自分のお店に合った内容に直して使いましょう。
●掃除のプロによるわかりやすい動画もあります!参考にしてみてくださいね!
スタッフが進んで掃除をしたがるトイレとは?
①「おそうじマニュアル」をつくる
「トイレ掃除を全くしたことがない」という人もいるものです。「何をしたらいいか分からないから適当にやる」ということを防ぎ、また特定の人しか掃除方法を把握していない、という状況にならないためにも、マニュアルを作成しましょう。マニュアルを作るコツは以下の3点です。
①1章で説明した、「オープニング・クロージングにやる掃除」「営業時間内にやる掃除」「週に1回程度やる掃除」で分けて作成する
②使う道具も明確に書く
③まずは自分でやってみる
手書きでもかまいません!文書化してスタッフみんなで共有できるように、トイレの収納棚の裏側にファイルとして下げたり、スタッフルームに掲出します。新しく入店したスタッフにも必ず覚えてもらうようにします。
②「おそうじスケジュール表」&「トイレチェック表」をつくる
「毎日」と「曜日ごと」に行う掃除の内容を明記した「清掃カレンダー」を作成してスタッフ全員で共有しておきましょう。全部の清掃を毎日行うのは時間のロスになりますし、逆にササッと済ませる日々の清掃では落としきれない汚れもあります。その表を見れば「今日はどこを掃除すればよいか」スグわかるので便利です。
また、営業時間内に行う「トイレチェック表」を作成しましょう。これは「誰が・何時にチェックしたか」を明確にする記録です。お店のルールとしてスタッフ全員で共有することができ、チェックが漏れても「単純に忘れてしまった」のか「その時間が忙しくて無理だった」のか、原因を明らかにすることができます。
また、トイレチェック表をお客様の目につく所に貼ってある店も多いと思います。たしかにチェック表はお客様に「このトイレは常にチェックされています」という安心感を与えることはできます。しかし逆に「義務的に最低限を行わせている=イヤイヤやっている」印象や、「表を作らないと掃除ができない=教育が行き届いていない」印象を与える場合もあるのです。こんなことも加味して、貼りだすことは一度考えてみてはいかがでしょうか。
③お手本は自分が見せる
トイレ掃除が好き!進んでやりたい!という人は多くないものです。人がいやがる仕事ほど、まずは自分からやる、という姿勢がとても大切です。スタッフに教えるときは、自分でまずやり方を見せ、こういう感じでね、と教えるようにしてください。まずは店主や先輩の姿を見てもらって「この位までやったらいいんだな!」と理解してもらうことが大切です。
④そうじ用品を揃える
トイレ用の洗剤、お掃除シート、ブラシなど、清掃用品の出費を惜しまないで下さい。道具が無いと適切に掃除できないものです。また、「トイレ掃除は素手で」という神話もありますが、飲食業の場合は衛生管理が優先です!使い捨てのゴム手袋などを用意すれば、スタッフも気持ちよく掃除を行うことができますし、細菌感染の予防にもなります。また、道具をキチンと片づけるまでがトイレ掃除です。置き場所を確保し、整理整頓することで掃除用品の管理もしやすくなります。
貼紙は「しない方がいい」3つの理由
あなたのお店に張り紙はしてありますか?お客様のあまりのマナーの悪さに耐えかねて、注意書きを掲示している店をよくみかけますね。「一歩前へ!」「狙いを定めて…」「君のはそんなに…」などなど。また最近よく見かける、「キレイに使ってくださってありがとうございます」という貼紙。これは先に感謝を伝えることで、「キレイに使いましょう」と強制するよりも心理学的に効果があると言われ、駅やSAなどの公衆トイレで数多く採用されています。しかしちょっと待ってください!張り紙を貼る前に読んでほしい3つの理由があるのです。
①お客様との心に距離感
張り紙は「見知らぬ相手に警告をする」行為となり、張り紙はお客様との心に距離感を与えてしまうことにつながるのです。何万人が利用する駅などの公衆トイレと違い、飲食店のトイレを利用する人数は限られています。お客様には「自宅のように」とはいかないまでも、くつろいだ気分で過ごしていただきたいものです。まずはこちらからお客様を信じることで、信頼関係を築いていけるのではないでしょうか。
②張り紙が誘う「汚いトイレ」の連想
張り紙が貼ってあるとネガティブなイメージが連想されてしまうものです。例えば「何人もの人がこのトイレを汚して、スタッフがイヤな思いをして片づけたんだな」「トイレを汚して平気な人が来るような店なんだな」などなど…。排泄行為は生理現象とはいえ、ここは飲食店。トイレにいながら”不潔”というマイナス情報を忘れさせてくれる、快適な空間を目指したいものです。
③当たり前です!というふるまい
デパートや高級ホテルには貼紙や、トイレチェック表がないのはなぜでしょうか。これはサービスを提供する側の「清潔なスペースを保つことは当たり前である」という態度と受け取れます。洗練されたサービスも不潔なトイレでは言い訳無用で台無しになってまうからです。張り紙が無くてもキレイなトイレは「これがウチのスタンダードなんですよ」というお店の態度になります。
吐瀉物をサラサラにする魔法の粉とは?
今年もやってきました、宴会シーズン。飲食店、とりわけ居酒屋業態のお店では、飲み過ぎたお客様の「吐瀉物」の処理に悩まされることもあるのではないでしょうか。なかには「嘔吐したら罰金!」というかなり強気の張り紙をする店も存在するようですが、なかなかそういう訳にもいきませんよね。清掃時の負担を減らすためにも、衛生面でも、ここはお役立ちグッズに頼るしかありません!
飲食店と同じく、年末年始の吐瀉物に悩まされているのが鉄道駅です。そんな駅に常備されているのが昔ながらの「おがくず」と、「オードキエール」という薬品です。この「オードキエール」は高分子ポリマーなどで作られた魔法の粉。ふりかけると吐瀉物がサラサラの粉状に固まるため、後はサッサッと集めればOKという優れものなのです。ただし、「オードキエール」は業務用の商品で、一般向けには販売されていませんが、代替商品があります。いずれも効用はほぼ同じで、ネット上で購入することができます。
①ノンゲーロ/㈲共栄 ■120gずつの包装×10個セットになっていて保存にも便利
②オウトロック/㈱リブロ ■100gずつの包装、700g容器入りの商品あり
③カタメール/㈲共栄 ■700g容器入り
④カタヅケ隊/サラヤ㈱ ■30gずつの包装
⑤サットクリーン/ハーパ-ベンソン㈱ ■500g容器入り
⑥ゲロポン/ホワイトプロダクト㈱ ■100gずつの包装、1kg容器入り商品あり
販売価格も加味したおすすめ順です。個包装されているほうが保存には便利で、1回の使用量もわかりやすいのですが、嘔吐物の量によって調整しやすい、とお考えの方は大容量容器入りをおすすめします。
誰も教えてくれなかった…吐瀉物処理マニュアル
処理キットをつくろう!
まずは「非常用緊急処理キット」を用意しておきましょう。下記のグッズをひとまとめにして、ポリ袋などに入れ「嘔吐物処理用」と明記しておきます。
①マスク・ゴム手袋・使い捨てエプロン(あれば)※すべて使い捨てします
②嘔吐物凝固剤
③500mlのペットボトル
④ゴミ袋×2枚
⑤水拭き用の不織布・ボロ雑巾×2枚※最後の水拭きに使用した後、捨てます
⑥嘔吐物処理マニュアル
※このほかに、台所用塩素系漂白剤、トイレットペーパー、ペーパータオルが必要です
嘔吐物処理マニュアル
まずは①のマスク、ゴム手袋を装着します。
①飛散防止処理
嘔吐物のまわりをトイレットペーパーなどで囲い込みます。意外と飛散しているものですので、壁なども注意してみましょう。その後、凝固剤を嘔吐物にまんべんなくかけたあと、ペーパータオルや新聞紙等で嘔吐物を覆います。
②下準備
消毒液を作り、④のゴミ袋の口を広げて横に置き、⑤の不織布・雑巾を水で濡らしてよく絞っておきます。
<消毒液の作り方>台所用塩素系消毒剤(ハイターなど)をペットボトルの キャップに半分弱入れ、水をいっぱいに入れた500mlペットボトルに入れ、ふたをして混ぜて完成です。
③ふき取り
嘔吐物はペーパータオルや新聞紙等で外側から内側に向けて、 汚れた面を折り込むように、そっとぬぐい取ります。この時、汚れた面を何度も床になすりつけないように注意してください。使用したペーパータオル等は、すぐポリ袋に入れます。一度床を水拭きし、使用後の不織布や雑巾は同じポリ袋に入れて捨てます。
③床の消毒 ※必ず換気をして行ってください
嘔吐物のあった床とその周囲をペーパータオルや新聞紙等で覆って、消毒液をまんべんなく染みこませ、10分経ったら消毒したペーパータオルを捨て、床を水拭きして、使用後の不織布や雑巾は同じポリ袋に入れて捨てます。ポリ袋の口は堅く縛り、もう一回ポリ袋に入れて二重にします。後は、可燃物としてごみ処理します。
★最後に、処理キットで使ったものを補充することをお忘れなく!できるならこのキットの出番が少ないことをお祈り申し上げます!!