「働いてあげている」「働かせてあげている」はトラブルのもと!
現代の飲食業界において、健全な経営状態を保つためには「健全な労働環境の整備」が必要です。しかしながら中小企業、個人自営業が全体の9割以上を占める飲食業界は他のサービス業界同様、健全とは言い難い労働環境により雇用者と従業員間のトラブルが多い業界です。
料理業界はそもそも「職人の世界」である事からいわゆる「サラリーマン的」な勤務意識がなく、【働く=奉公=修業→独り立ち】という図式が成立してきた世界ですが、「外食産業」「フードビジネス業界」の名のもと、メジャー業界として確立するには「正しい労務知識」は無視できません。
このコーナーでは飲食業界の労働者・雇用者の両者の視点で正しい労務知識を紹介し、雇用者への啓発・提案、そして労働者への権利・責任などを実例をもとに理解していただき、両者にとってトラブルのない健全で分かち合える職場構築のサポートを目指しています。
【今回のご相談内容】
「法定労働時間1日8時間・1週40時間と割増賃金の関係」
Q、アルバイトをしています。1日の労働時間が8時間を超えても、時給に残業の割増がつきません。お店に文句を言ったところ、「1週間の労働時間の合計が40時間を超えなければ割増はいらないのだ」と返答されました。これは本当ですか。【21才男性】
A、お店の言っていることは間違っています。法定労働時間を超えて労働させた場合には、時間外労働として1.25倍の割増賃金を支払わなければいけません。
法定労働時間とは、1日について8時間、1週間について40時間ですが、このどちらかを満たせば法定労働時間をクリアしたことになるわけではありません 。どちらか一方でもオーバーすれば、法定外の時間外労働となり、割増賃金が必要になります。例えば、1週40時間以下であっても、ある日の労働が8時間 を超えれば、その超えた分には割増賃金が必要です(図1)。
逆に、1日の労働時間が8時間以下であっても、1週でみれば40時間を超えれば、その部分は 割増となります(図2)。ただし、1週で40時間を超えたかどうかみるときには、すでに法定外労働としてカウントした分は除いて判定します(図3)。