【飲食店あるある労務相談】
Q. 先日入社したお店では、1日8時間労働、1週6日勤務、月給25万円という労働条件で採用されました。そうすると、1週は48時間労働になりますが、確か法律では1週40時間が上限であり、それ超えると残業になるのではなかったでしょうか?
A. おっしゃるとおり、労働基準法(労基法)では1週の労働時間の上限を40時間と定めていますので、この契約は無効となります。しかも、無効になるだけでなく、労基法が定めている基準に、自動的に修正されることになります。
労働時間の上限について、労基法32条において、「1日8時間、1週40時間」と定められています(これを法定労働時間といいます)。ご質問のように、「1週48時間労働」という契約をしても、労基法に定める基準を下回る労働条件を定める労働契約は、その部分について無効となります(13条前段)。たとえ、あなたとお店に何の不満もなく、双方が合意して契約したとしても、労基法は強行法規ですから、その合意は無効となります。
そして、単に無効になるだけではなく、無効となった部分は、自動的に、労基法で定める基準に修正されてしまうのです(同条後段)。
問題となるのは、今回のケースは月給制であるという点です。修正後は、所定労働時間が1週40時間労働の契約になるだけで、月給額は25万円のままでしょうか。それとも、労働時間が短くなるのに比例して、月給額も引き下げられるのでしょうか。
ある裁判例では、同様のケースについて、「月給とは、月あたりの通常所定労働時間の労働への対価として当該金額が支払われる旨の合意であるから、労基法に従って修正された所定労働時間に対する対価として支払われたものと解するのが相当」と、裁判所は判断しました(しんわコンビ事件・横浜地判令元・6・27)。ご質問のケースで言えば、1週の所定労働時間は40時間に引き下げられるが、月給額は25万円のままである、ということです。
この裁判例では、会社側は週6日勤務であることを前提に、年間の所定労働日数を「309日」としていました。しかし、1週あたりの所定労働時間が48時間から40時間に修正されるため、週あたりの所定労働日数は5日に修正され、52日(365日÷7日)を309日から差し引いた「257日」が年間の所定労働時間になると判断されました。
その結果、1ヶ月平均所定労働時間は、会社の主張では
8時間×309日÷12ヶ月=「206時間」
だったところ、
8時間×257日÷12ヶ月=「171.33時間」
に修正されることになりました。
月給が25万円だった場合、時間単価は、
25万円÷206時間=「1,214円/時間」
から
25万円÷171.33時間=「1,459円/時間」
に増加することになります。
さらには、当初の契約どおり、1週48時間ちょうど働かせていた場合、会社の認識では残業時間は発生しないことになります。しかし実際には、1週40時間の法定労働時間をオーバーした8時間分は残業時間となり、1.25倍の割増率で計算した割増賃金を支払わなければならなくなります。
お役に立ちましたか?もっと知りたい方、
飲食人と飲食店の労務相談はコチラ!
By 求人サイト グルメキャリー