手軽においしく食べられて、私たちの食生活に欠かせない「おにぎり」のことを、あなたは何と呼んでいますか?
一説によると東日本では「おにぎり」、西日本では「おむすび」と呼ぶことが多いと言われています。しかし、実際はそれほど東西の差はないようです。『ごはんを食べよう国民運動推進協議会事務局』が2013年に全国2万人を対象として「何と呼ぶか」を調査したデータによると、「おにぎり」が89%、「おむすび」が10%と、「おにぎり」派がかなり優勢を占めました。近畿圏でも全国平均とさほど変わらず、中国地方で「おむすび」と呼ぶ人の割合が他地域に比べて高い、という結果が出ています。
神話まで遡る深イイ話があった、おにぎりとおむすびの違い
物理的に残されている最古の「おにぎり」は、なんと弥生時代のもの。約2000年前の「おにぎりの化石」として、石川県の「杉谷チャノバタケ遺跡」の竪穴式住居跡で発掘されています。黒く炭化してはいますが、人間の手で握った跡がしっかり認められるそうです。もっとも、弥生人がおにぎりを何と呼んでいたのかはナゾのままです。平安時代になって、ようやく文献にも「おにぎり」が登場します。屯食(とんじき)というもち米を蒸して固めた食べ物で、貴族の旅行や宴会の際に用いられていました。
「おにぎり」・「おむすび」はいずれも「にぎりめし」を丁寧にした言葉だと言われています。
「おにぎり」は、もとは女性や子供の言葉であった「にぎり飯(いい)」から「にぎりめし」に変化し、「おにぎり」はその言葉をさらに丁寧に言い換えたものだとされています。
一方、「おむすび」は貴族に仕える「女房」の言葉が由来、とする説と、日本神話が由来、とする説などがあります。
古事記にも、“天地創造にかかわった「カミムスビノカミ」が、スサノオに殺されたオオゲツヒメの両目から稲種を取り出した”ことが記され、ムスビという言葉とコメとの縁の深さを読み取ることができます。そして「おにぎり」のスタンダードともいえる、三角の形についても意味があるといいます。古代の日本人は、森や美しい三角形をした山のことを、神の住む聖域として 「神奈備(カンナビ)」と呼び、三角を神秘的な形としてとらえていました。米を三角形に握ることで、神の力を授かろうとした、古代人の想いにロマンを感じますね。