ビーフステーキの最高位3つの「ロイン」
ステーキに適した最高の部位とされるのが、サーロイン、テンダーロイン(ヒレ)、リブロイン(フランス語ではリブロース)の「ロイン3点」です。
ロインの中でも最高位といわれるのが、サーロインです。あまり運動の影響を受けない部位のため筋肉は柔らかく適度に脂肪が入り、特に肉質や風味が良いといわれています。サーとは、イギリスの叙勲制度での栄誉称号の一つで、ナイト・准男爵に与えられる称号のこと。一説によると、この部位のステーキを食べた16世紀のイギリス国王ジェームズ1世が、あまりのおいしさに剣を抜き、肉に向かって「汝にサーの称号を与える」と宣言したのが語源ということです。
このシーンをよく考えると、「ミスター味っ子」に匹敵する瞬間です(笑)
テンダーロイン(ヒレ)も牛一頭分からとれる量はわずか2~3%のため、最高級とされている部位です。牛の大腰筋であり、股関節の内側にある筋肉で、フランス語のフィレが語源とされます。特に、シャトーブリアンとよばれる部分は極め付きで、ほとんど動かされることがないため極めて柔らかい上、適度な脂肪が細やかに入っているためお肉の芸術品とも呼ばれます。18世紀末の政治家・作家で、美食家として知られたフランソワ=ルネ・ド・シャトーブリアンが好んで食べたことが由来といわれます。
最後はロース部位の主体となるリブロイン(リブロース)。アメリカでは先に挙げたサーロイン、ヒレと比肩する価値を持つ最高部位といわれる、牛の背中にあたる部分です。胸(背)最長筋の中で最も肉厚の部分のため霜降りになりやすく肉質も優れているので、ステーキはもちろん、しゃぶしゃぶ、すき焼きにもぴったりです。
ステーキは各国によって呼び名や好まれる部位も違います。アメリカでポピュラーなのは「Tボーンステーキ」とよばれるT字型の骨付き肉です。骨を中心にして片側にサーロイン、反対側にフィレが付く、2倍楽しめる部位です。このうちフィレの多い部位をポーターハウスと呼びます。また、アバラ部分のジューシーで柔らかい肉はリブアイステーキ、別名デルモニコとも呼ばれます。テキサスではトマホーク(ネイティブアメリカンの斧)と名づけられた全長50cm、重さ1.5kgある巨大なリブアイも存在します。サーロインの表記は同じですが、お店によってはニューヨークストリップやカンザスシティ・ステーキなどと呼び名が変わることもあります。